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雨のち晴れ

40代主婦の考え事・いろいろ

運動会 番外編 ~PTA腕章をつけたRちゃん~

 Rちゃんは長男の同級生のママであり、奇遇な事に、私の高校の同級生でもある。入学式の時、あれはもしやRちゃんではないか?Rちゃんでなければ振り向かないはず、と思い、一か八か声を掛けてみたら、あら!やっぱりRちゃん。25年ぶりの再会となった。

私達は脳ミソにまで筋肉をつけられる事で評判の、体育科のある高校で一緒の部活だった。私にとって、部活の中で特につるみはしないが、なんとなく馬が合うのがRちゃんだった。

忘れもしない、高校最後の試合に負けた帰り、Rちゃんは私を悪の道に誘ったのだった。

「ねえ、タバコ吸おうよ。ウチらずっと遊んだ事なんてなかったんだからさ!」

その通り。私達は青春の全てを部活に注いできた。オシャレな靴下を履きたかったし、お気に入りのバンドのライブなんかにも行きたかった。バイトだってしたかった。「楽しみません。勝つまでは。」そんなスローガンこそなかったが、バカみたいに皆で髪を短く切り、気合と根性が全てだった。

真面目な私が、あの時なぜ同意したのか今でもわからない。負けて投げやりな気分と、部活を引退した開放感からか。

「い、いいよ。」

Rちゃんはチャッチャと自動販売機でキャスターマイルドを買い、何処からかマッチを入手してきた。当時はタバコもマッチも簡単に手に入ったし、タバコを吸うような高校生はよく見かけた。もっとも、校則の厳しいの私達の高校では、見つかったら最後。顧問の往復ビンタは間逃れないだろう。停学ではなく、ビンタで済むというところが昔ならではだが。

そして、言うまでもないが、タバコを吸ったところで、パッとしない青春がバラ色の青春に変わるはずもなかった。

 

Rちゃんは卒業後 、たしかデパートに就職したのだと思う。何度か会って転職したという話を聞いてはいたが、その後はすっかり疎遠になってしまい、空白の25年の人生を私は知らない。ただ、バブルを引きずるお水っぽい雰囲気に、なあんとなく察しはついた。

 

運動会の時、ゴルフに行くスナックのママ風のRちゃんが、腕にPTA腕章をつけて歩いているのを見かけ、私は笑いが止まらなくなってしまった。

うちの小学校は子供1人につき、1回役員をやらなければならないルールになっている。私は、以前からRちゃんには、6年生で役員になって謝恩会の担当になったら大変みたいだよ、早いうちに役員をやったほうがいいよ、と言っていたのだが、Rちゃんが役員に立候補する事はなかった。Rちゃんは大胆にも、PTA役員を逃れるつもりだったのだ。そんなの無理に決まってるのに~。

「Rちゃん!カッコイイのつけてんじゃん!」

と冷やかしてみた。

「そーだよ!卒業担当だよ、全くさ~ウンチャラ、カンチャラ…」

と、いかに自分が不当にPTAをやらされているか、というような事をまくし立てた。

「子供1人につき1回役員やるのはきまりなんです。みーんなやってんの!」

と言ってみたが、そんなルールは聞いた事もない、と取りあわない。

一通り話して 気が済んだのか、Rちゃんは話題を切り替えた。

「あたしさ~、今、昼間の仕事やってんの。そうしたらそこの社長の奥さんが、なんと、あの〇〇センパイ!」

「それ、この前聞いたよ。」

「あ、そうだっけ。じゃ、あたし昼間の仕事やってるからさ~連絡してよ。」

Rちゃんは昼間の仕事、昼間の仕事、と散々連呼した後、保護者の駐輪場誘導があるからと正門の方を見てから、思い出したように言った。

「あ、そうだ!アンタの息子、なんて名前だっけ?まあいいや。足、速いじゃん。」

Rちゃんは、ボテっと私の太腕をたたいてから、子分のチーママを連れて颯爽と歩いて行ったのだった。

25年の月日を経てもなお、なんとなく馬が合うのは変わらない。 

なあんだ。何だかんだで、役員楽しそうにやってるんじゃない。Rちゃん。

運動会、お疲れさまでした。